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ストーリーズ
與那覇歩美
Yonaha Ayumi
沖縄の風をまとい、筆を走らせる猫好きアーティスト
今回訪れたのは「未来の沖縄観光と明日の福祉をつなぐ」を理念に掲げ、児童デイサービスや就労継続支援を展開する沖縄県糸満市の株式会社 沖縄観光開発。お話をうかがったのは、B型事業所でアート活動を行っている與那覇歩美さん(よなはあゆみ)さん、そして、主任の宮城貴人(みやぎ たかと)さんです。
沖縄県糸満市の沖縄観光開発(就労継続支援B型)に所属し、日々創作活動に励むアーティスト、與那覇歩美さん(以下、與那覇さん)。所属して約3年になる與那覇さんは、午前と午後に2時間ずつ絵を描く時間を設け、その豊かな感性をキャンバスに表現しています。
物心ついた頃から絵を描くことが大好きだったという與那覇さん。「鼻血が出るまで描いたことがあるんですよ!」と、幼少期に絵に没頭したエピソードを楽しそうに話してくれました。その情熱は今も変わらず、彼女の創作活動を支える原動力となっています。
與那覇さんの作品を特徴づけるのは、なんといっても「猫」の存在です。擬人化された猫たちが織りなす物語や、猫と意外なモチーフが組み合わされたユニークなイラストが数多く見られます。猫たちの表情は豊かで、時に愛らしく、時にユーモラスに、見る人の心を惹きつけます。
歩美さんの制作ペースには、支援員の宮城さんも目を見張るほどです。四つ切り画用紙サイズの作品も、下書きから色塗りまでをわずか2日で仕上げてしまうというから驚きです。そのスピード感からは想像できないほど、作品は非常に丁寧な仕上がり。細部までこだわり抜かれた筆致からは、彼女の絵に対する真摯な姿勢が伺えます。
制作工程としては、まず鉛筆で丁寧に下書きを行い、その後、色鉛筆やクレパスを使って色彩豊かに着彩していきます。集中力が途切れることなく、「ゾーン」に入ると一気に描き進めるそうです。この集中力が、あの驚異的な制作スピードと繊細な表現を生み出しているのでしょう。
作品のアイデアは、日々の生活の中に隠されています。ニュースで偶然見かけた珍しい植物や、宮城さんとの会話の中から生まれる面白いアイデアに影響を受けているそうです。沖縄の豊かな自然や、周囲の人々との交流が、與那覇さんの創作意欲を刺激し、新たな作品を生み出す源となっています。
また、與那覇さんの創作活動において大きな転機となったのが、沖縄県身体障害者福祉協会が主催する沖縄県身体障害者福祉展(2025年)での受賞です。これが初めての受賞となり、作品作りの大きなモチベーションに繋がったと語っています。この経験が、彼女のアーティストとしての道をさらに確かなものにしました。
そんな與那覇さんの今後の展望は、さらに大きな広がりを見せています。将来的にはさまざまな展示会に出展し、多くの人に自身の作品を見てもらいたいと考えているそうです。そして、いつかは自分だけのアトリエを持つという夢も抱いています。
さらに、彼女の「猫シリーズ」のイラストは、商品化も視野に入れているとのこと。カレンダーやマグカップなど、歩美さんの描く愛らしい猫たちが、より身近な形で私たちの生活を彩る日もそう遠くないかもしれません。
與那覇さんの描く猫たちは、彼女自身の喜びや発見を私たちに伝えてくれます。これらの夢に向かって、今後も素晴らしい作品を生み出し続けることでしょう。