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平田

Hirata

見る人を圧倒する
ダイナミックさと細かさ。
切れ端1枚もムダにしない作品づくり

今回訪れたのは「生き甲斐のある生涯を支援する!」をミッションに放課後等デイサービスや障害者就労支援を展開する沖縄県糸満市の社会福祉法人トゥムヌイ。お話をうかがったのは、就労をしながらアート活動を続ける平田(ひらた)さん、そして、支援員の照屋有紗(てるやありさ)さんです。

平田(ひらた)さん(左)と支援員の照屋有紗(てるやありさ)さん(右)。「最初は画用紙に描いていたよね」と二人でにこやかに、過去の作品を振り返っていました。

平田(ひらた)さん。大きなダンボールに、1つずつ丁寧にパーツを貼っていく地道ひたむきさが平田さんの作品づくりの特徴です。

 

 

小さな折り紙を1枚ずつ、
こつこつと描いて貼っていく

平田さんが普段働いているのは、トゥムヌイが運営する沖縄式島豚焼肉ばんない。まかない班としてスタッフのまかないづくりを担当しています。

平田さんは、週に5日、9時から15時までの仕事が終わってから、お父さんが迎えに来てくれる15時半から16時過ぎまでの時間を使って、作品づくりをしています。

 

では、どのように作品づくりをしているのでしょうか。

平田さんは焼肉屋さんの一角にある大きなテーブルを使用しています。取材にうかがった日は、テーブルいっぱいに広げられた段ボールに、1cm角くらいに刻まれた、色とりどりの小さな折り紙を1枚ずつのりで貼っていました。

取材に訪れた際、平田さんは1年ほどの時間をかけた大作の制作に取り組んでいました。

トゥムヌイが手がける他の事業所で、パッションフルーツの作業をしている班があります。平田さんが使っているダンボールは、その班から支援員さんがもらってきたものだそう。

そのダンボールは、大人が両腕をのばしたくらいのサイズ。平田さんは、以前、帰宅後にも作品づくりを続けようと思って持ち帰ったことがありました。でも、家で作業するには大きすぎて、この作品づくりは仕事場のみで行うことにしたそう。

使用している道具は、折り紙、画用紙、クレヨン、クーピー、ネームペン、ハサミ、のり。すべてお父さんが用意してくれたもの。

 

 

「動物だけの世界があったらいいな」

平田さんがトゥムヌイにやってきたのは2011年。高校を卒業してすぐのタイミングでした。

 

高校生の時に絵を描き始めた平田さん。その頃は、画用紙に人間の絵を描いていました。

 

その後、トゥムヌイに入った平田さんは、動物の図鑑を見る機会があったそう。「動物だけの世界があったらいいな」と思ったことがきっかけで、平田さんは動物を描き始めました。

 

でも、平田さんの画用紙に動物を描くという制作スタイルに、スランプの時期が訪れます。コロナ禍のことでした。

その頃、平田さんは、支援員から大きなダンボールをもらったことがありました。それを見て「何か貼れるかな」と思ったことが、今の作品のつくり方につながったのだそう。

最初の頃の作品。折り紙はまだ登場していませんが、太陽や動物たちの表情は今の作品にも共通しています。

画材が画用紙から大きなダンボールに変わってからの作品。図鑑を見ながら描くことで、シルエットもどんどん上達しているそう。圧倒される大きさと細かさです。

 

 

作品づくりに欠かせない、こだわりの工程

平田さんの作品はどのように出来上がっていくのでしょうか。

 

工程はいくつかのパートに分かれています。

 

まずは下地。

ダンボールの左下から、異なる色のクレヨンでタイルのように順番に塗りつぶしていきます。

 

次は動物の準備です。

図鑑にある動物のシルエットを見ながら、折り紙の白い面に鉛筆で形を描いていきます。それができたら黒色のネームペンでなぞり、鉛筆の線が絶対に残らないよう消しゴムで消します。

そして、平田さんがオリジナルで考えた模様や顔を描いていきます。

陸や海の動物も、深海生物も顔がみんな同じなのは、平田さんの作品の特徴の1つ。キュンとしそうな「つぶらな瞳」が平田さんならではのスタイルです。

20〜30枚ほどの動物が作れたら、ペンの線に沿って切っていきます。

なお、動物を切り取った後の折り紙は、細かく刻み、袋に入れて大切にとっておく。これも平田さんのこだわりです。

 

パーツが揃ったら貼り付けていきます。

一番最初に太陽。そして動物たちを順番に貼っていきます。

最後は、細かく刻んだ折り紙をプランクトンに見立てて、動物たちの隙間を埋めるように1枚ずつダンボールへと。平田さんは、白い部分を残したくないと、ダンボールを色や紙で埋めているのです。 

色とりどりの折り紙を、1枚ずつ丁寧に貼っていく平田さん。切れ端も、余ったダンボールも無駄にしない、それが平田さんのポリシーです。

平田さんは作品を作っている時、どんなことを考えているのでしょうか。

 

取材陣からの質問に、平田さんは「見た人が癒されて欲しい」と答えてくれました。そして「この作品をみることで、動物を大切に思ってもらえるかな」とも。

平田さんの言葉からは、動物に対する虐待が多いことに心を痛めている気持ちが伝わってきました。

 

また「人間を描くのが苦手」だという平田さん。話を聞いていくと、完全に動物だけの世界をつくりたいように見受けられました。

でも、本当は「動物たちの中に人間も入れてあげたい」そうです。そのため、平田さんは、今、人間を描くことにも挑戦しています。

この日、撮影用に用意してくれたお面。平田さんの作品に欠かせない「太陽」のモチーフとして作っていたパーツを利用したものです。

普段の平田さんの作品づくりをよく知る、支援員の照屋さんは「黙々と取り組む姿が素敵」と教えてくれました。

 

平田さんは、コンテストにも積極的で、受賞したことはないものの、毎回「賞を取るぞ!」と目標を立てています。公募ポスターが休憩室に張り出されると、すぐに「応募したい」と支援員に声をかけるそう。

絵画コンテスト「働くすがた」に出品した作品。パティシエの仕事を描きました。

平田さんの作品は、職場で販売しているガチャガチャの商品や、農協で販売した商品に使用されています。

 

商品開発の時は、まず照屋さんから「こんな絵描ける?」と平田さんに投げかけます。すると、平田さんは、できない時は「できない」と言い、引き受けた時には必ず仕上げてくれるそう。

そんなエピソードから、平田さんの誠実さや責任感がうかがえました。

グッズに採用された平田さんの動物たち。どれも愛くるしい表情がたまりません。

 

「次は宇宙で動物たちのまちをつくる」

平田さんの1つの作品をつくり終わったら、次の作品に取り掛かります。

 

これまでに、海の世界や海と陸の世界などを作品にしてきた平田さん。

「次につくりたい作品は何ですか」という取材陣の問いかけに、平田さんはこう答えてくれました。

 

「宇宙の世界で動物たちのまちをつくる」

 

宇宙を舞台にした動物たちのまちには、人間も仲間に入っているのでしょうか。いずれにしても、その世界には、きっと動物たちや見る人への愛があふれていることでしょう。拝見できる日が待ち遠しいです。

 

〜平田さんの制作風景〜

社会福祉法人トゥムヌイ制作の動画です。ぜひ平田さんの実際の制作の様子もご覧ください。

 

 

 

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